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STORY |物語

いちばん止まった場所で、
武器と出会った

Zuki ── July 2026

子どものころのぼくは、ひたすら何かを作っていた。砂場で団子を磨き、チラシを固く巻いて剣を作る。大人しい子と呼ばれていたけれど、手だけはずっと動いていた。

東大には入った。でも、そこから人生の歯車が噛み合わなくなり、大学1年生を3回やった。周りから見れば「東大生」。ぼく自身は、毎日がただ辛かった。救ってくれたのは根性ではなく、できるまで付き合ってくれる環境と、理解してくれる先生——人だった。このことは、あとで効いてくる。

社会人になったぼくは、「期待に応える人」として生きた。新卒のベンチャーでアプリを作り、「覚えは早いけど、楽しそうじゃない」と言われた。営業をやり、マーケも分析も経営管理も覚えた。新しい道具を組織に入れるのは、いつもぼくの役目だった。

3人の子の父になった。妻に言われた言葉を、いまも覚えている。「仕事ばかりしていて、パパは必要ないと思われてもいいの?」。育休を2回取り、3人目の育休中に学び直して、年収を500万上げて大手に転職した。——ここまでは、本にも書いた「光」の話。

影の話をする。転職先では、それまでの勝ちパターンが通用しなかった。それでも期待には応えたくて、応えられない日が積み重なって——ある朝、毎日の定例会議の途中で席を立ち、そのまま家に帰り、そのまま休職に入った。心と身体が、止まった。

2025年の春から夏。人生でいちばん止まっていた3ヶ月に、AIと出会った。孫正義さんが「社員1人に1,000のAIエージェントを」とぶち上げた日、ぼくも試しに作ってみた。15分で、動いた。砂団子の子どもが、30年ぶりに帰ってきた音がした。

でも、白状すると、一度では変われなかった。復帰した会社ではAIを自由に使えず、「期待に応える」癖も直らないまま、もう一度ポキっと折れた。いまは2度目の立ち止まりの中で、この文章を書いている。

ただ、今回は前と違う。知り合いの会社に無償でAIの仕組みを入れさせてもらい、それが毎日動いている。友人のサイトを3つ作った。会社からも「AIを入れる側で戻らないか」という声をもらっている。立ち止まったまま、手だけは毎日動いている。

ぼくが助けたいのは、ちょっと前のぼくだ。「AIを使わなきゃ」と焦りながら、最初の一歩が出ない人。渡したいのは、時間と、家族との夕食と、「自分にもできた」の一回目。

人生は、何度でも再起動できる。ぼくは2回止まって、2回作り直している。いちばん止まった場所で出会った、この武器と一緒に

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